2010年4月11日日曜日

HIV検査が陽性になったら

前掲の「リスク・リテラシーが身に付く統計的思考法」は、HIV検査における偽陽性問題も取り扱っている。

さて、日本においてHIV検査で陽性になった場合、ほんとうに感染している可能性はどれぐらいだろうか?

多くの疾病判定検査では、偽陽性は許されるが、偽陰性は許されないことになっている。つまり、感染していないのに感染している(陽性)と判定されること(偽陽性)は、許されても感染しているのに感染していない(陰性)と判定されること(偽陰性)は許されない。これは、合理的に理解できるだろう。偽陽性があるので、陽性であった場合は慎重な追加テストが必要となる。HIV検査においても、コストと時間をかければ「絶対」の判定を行うことができる。しかし、通常の2種混合の検査においては、偽陽性が発生してしまうことは避け得ない。だいたい、0.3パーセントぐらいの偽陽性の発生が見込まれている。

昨年末の時点で、日本国内では、まだエイズを発症していないHIV感染者が11,560人、エイズ患者が5,319人の合計、16,879人となっている。また、凝固因子(血友病)製剤による感染者が、1,439人となっている。ここから、日本国内の実感染者数を推定するのはどうすればよいだろう。

ひとつの指標は、献血におけるHIV感染率だ。厚生労働省のエイズ動向委員会の最新報告によると、昨年の数字で約5百万件辺りの抗体陽性数は、約100件で、パーセントにして0.002、10万件当たり2件程度だ。献血における陽性数の考え方は、難しい。献血では、HIV感染が陽性になっても本人に知らされることはない。それなのに、「検査」目的で献血する層がいるらしい。しかし、献血の母数にリスク・グループが多く含まれていると考えても、0.002パーセントという数字は大きな数字ではない。そこから考えても、実感染数が報告数の数倍以上というようなことはないのではないか?たとえば、約2倍と推定すると、3万人の感染者がいることになる。人口比で言うと、0.02パーセント強となる。

保健所等での検査は、年間十数万件で推移している。10万件にしてみると、リスク・グループのバイアスを考えないとすると、感染者は20人強だ。0.3パーセントの偽陽性によって、検査の結果では300人の感染してないのに陽性になる件数が出る。感染者の20人は確実に陽性になるので、320人の陽性が出て、うち20人だけが真の陽性である。すると、この検査で陽性となった場合に、真の要請である確率は、なんと6.25パーセントとなる。

自分で採血して検査するような簡易検査や即日判明する簡易検査では、1パーセント程度の偽陽性があると言われている。そうなると、10万件辺りでは、1000件の偽陽性が発生する。すると、このような簡易検査で陽性になった場合に真の陽性である確率は、さらに低く、約2パーセントに過ぎない。

保健所での検査でも、陽性となった人の16人のうち15人は非感染者で、簡易検査による陽性となった人の25人のうち24人は非感染者なのだ。

前掲書でも、偽陽性による悲劇が取り上げられているが、日本でもこの偽陽性によって、自殺を含む、人生の悲劇に直面した例が多いのではなかろうか?これは、「啓蒙」を強く必要とする案件だと思う。

1 件のコメント:

  1. 補足すると、リスク・グループという概念が重要だ。偽陽性率が之だけ高いと想定するのは、低リスク・グループを想定している。つまり、異性愛者、輸血未経験に限定すれば、これだけ偽陽性率が高い。

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